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EPO九州インタビュー:山都竹琉 野口慎吾さん

これまで九州地方環境パートナーシップオフィスでは、多くの九州・沖縄地域の活動団体の皆様と協働するとともに、オフィスとしてパートナーシップを基礎とした中間支援を行ってまいりました。

今回はその中から、環境省の地域循環共生圏づくり事業の採択団体として3ヵ年活動され、本年度が最終年度となる株式会社山都竹琉の野口慎吾さんに、熊本県山都町での共生圏づくりと、これから取り組んでいくことについて語っていただきました。

【熊本県上益城郡山都町】
山都町は、九州の真ん中「九州のへそ」に位置しており、中山間地ならではの気候や環境を活かした有機農業が盛んな町である。有機JAS認証事業者数は日本一(57事業者)であり、有機農業を核としたまちづくりをテーマに、内閣府のSDGs未来都市に選定されている。
令和5年度には「通潤橋」が国宝に指定された。さらには新たな道の駅や総合体育館がオープン、九州中央道「山都通潤橋IC」が開通するなど、交通アクセス向上とともに町のさらなる振興が進んでいる。また、宮崎県との県境に国見岳や市房山などをはじめ標高1,700m級の山々が連なっており、自然を活かした名所やレクリエーション施設が数多く存在しており、ありのままの自然と触れ合える町として親しまれている。

 

【株式会社山都竹琉】
山都町を拠点に、農産物の付加価値向上や地域づくり活動の一環として地域資源の利活用を推進することを目的とし、獣害や管理放棄等により荒廃した竹林において竹の皆伐・間伐を行い、竹林整備で出た竹材から農業用の土壌改良材や発酵促進剤、畜産や水産等の飼料、ぬか床などに使える乳酸発酵竹パウダー「山都竹琉:ヤマトタケル」へと加工、販売。
昨年からタケノコ販売も開始し、「山都竹琉」の製造販売の他、関連事業として「山都竹琉」を使用した農業技術教育及びコンサル事業、スマート農業等の運営業務を円滑に行い、農山村資源の利用推進と事業化に取り組んでいる。
地域循環共生圏づくりに3ヵ年取り組み、内外からの視察や事業連携の問い合わせも増えており、海外展開を見据えた活動を目指している。

noguchi 02山都町での地域循環共生圏づくりを実践してきた、山都竹琉の野口慎吾さん 

 

地域循環共生圏プラットフォーム事業(令和4年度)に応募したきっかけを教えてください。

(以下、回答は野口氏)
本当は環境省が地域循環共生圏づくりの事業を公募した初期段階で応募したかったんです。それがスマート農業の事業で忙しくなって後回しになっているうちに、山都町がSDGs未来都市に選定されました。
このとき有機農業を軸にSDGsを推進することになったんですが、地域主導というよりも、どちらかというと外からの提案で進んでいる感じがしたんです。そこに危機感があって、あらためて令和4年度に地域の人や団体が主体となって地域づくりに取り組む共生圏プラットフォーム事業(※令和元年度~令和5年度)に応募することにしました。

 

3ヵ年を振り返って、どのような点で地域(山都町)に残せたインパクトや手ごたえがありますか。また、今後の積み残しはありますか。

民間が主導となって町だけではグリップできないことをやれたと思っています。例えば最初は竹で関わっている身近なステークホルダーの集まりだったのが、高校・大学やツーリズム関係などの多様な人材を掘り起こすことができました。また環境一本ではなく、環境×農業や環境×教育といった掛け合わせのかたちで横展開できました。
それと、他の地域で共生圏づくりに取り組んでいるプラットフォームとのコラボレーションも生まれました。みんな地域では変わり者と言われていますが、熱量のある人たちなんですね。
積み残しとしては、地域内でこういった取り組みを行う人を作っていくことです。この事業でやってきたプラットフォームづくりなどを経験する人を増やしていきたいと思っています。

 

地域循環共生圏事業の実施前後で、地域の将来像、地域資源の捉え方、地域課題に対する考え方に変化はありますか。

実際に取り組みを進める中で方向性が研ぎ澄まされた感覚がありますね。
他の地域の活動者から気づきをもらえる機会もあって、あるプラットフォームの人から「あなたの言葉は外国語だから」と言われたことが印象に残っています。私の言葉では伝わらなかったり、立場が違うので説得できなかったりすることは当然ある。なので、自分がやっていることを突き詰めつつ、相手が共感できるところを探る、というコミュニケーションのきっかけになりました。
話をしに行ってみて伝わらないときは、「今じゃないな」と思って別のタイミングとやり方を探るようにしています。

 

プラットフォームづくりと中間支援を受けながらの活動を進めてきて、それぞれうまく取組が進んだ点と難しかった点はありますか。

いずれにしても、一緒に取り組む人が意識を共通していて同じ熱量になっていないと難しいと感じました。さらに、関わる人それぞれの立場を考えていないと進んでいかない。
私はプレイヤーとしての経験がないとマネジメントもできないと思っていますが、今回プラットフォームをマネジメントする機会を得て、周りの人を巻き込んだり巻き込まれたりする場を作ることができました。熱量がある人たちが顔を合わせることで、いろんな意見を出しあって、お互いに気付きがある面白い場になっていきましたね。

 

本事業を通じて生まれたプラットフォーム間の連携があれば教えてください。

八女市(福岡県)、みやま市(福岡県)、玉名市(熊本県)、あさぎり町(熊本県)など、同じ時期に共生圏事業に取り組んできた九州の団体とのつながりが続いています。また、滋賀の長浜など九州外にも仲間ができました。みんな取り組んでいる内容はそれぞれで、違うセクターの人たちとのコミュニケーションは海外との連携事業にも活きています。

 

地域循環共生圏事業がこうなっていけばいい、という希望はありますか。

やはり地域人材育成のスキームがあればいいと思います。既に脱炭素などの分野では人材支援の仕組みありますが、地域循環共生圏についても専門的な知見を獲得できて、プラットフォームのマネジメント能力がある若い人を地域で育てたいですね。大学院生や若手研究者が参加するような仕組みだと面白いと思います。
JICAの制度を参考に、「地域循環共生圏ジュニア専門員」的な環境と地域づくり分野の教育メニューがあるといいですね。

 

現在地域循環共生圏づくりに取り組んでいる団体やこれから取組む団体へ、共生圏づくりのポイントや活動のアドバイスをするとしたらどんなことがありますか?

自分たちの地域のリソースをしっかり調べて、取り入れられる事例を掛け合わせて、持ち寄ることが必要です。
それと、地域の中には「熱量をもった変人」がいます。こういった人たちとつながって話をするのがひとつ。「熱量をもった変人」たちが堅苦しくなく語れる場があると、「熱量をもった変人」たちに火がついて集団になり、ネットワークになります。ここに地域のことをやりたいと言ってくれる若者が参加してくれるとさらに面白い。
地域循環共生圏づくりのノウハウはやってきた人にしか分からない部分はありますが、事例はとにかくいっぱいあるので、ぴったりくるものをリサーチしつづけるのが重要です。

 

noguchi 01(令和7年1月24日 山都町にてインタビュー実施)

 

【インタビュー後記】
山都竹琉が取組んできた地域循環共生圏づくり事業が最終年度の終盤を迎えるにあたり、今回は地域の先頭に立ってきた野口さんにインタビューを行いました。
「熱量のある変人」「共生圏的な人材育成」など、共生圏づくりを行ううえで重要なキーワードやコンセプトがたくさん登場し、地域にどんな人物が必要なのかを再認識する機会になりました。
山あり谷ありの三ヵ年でしたが、常に未来志向で思慮深い人柄で、ときに地域に寄り添い、ときに引っ張ってこられました。その思いを今回のインタビューを通して伺えて嬉しく思います。

環境省 九州地方環境パートナーシップオフィス 
EPO九州
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