これまで九州地方環境パートナーシップオフィスでは、多くの九州・沖縄地域の活動団体の皆様と協働するとともに、オフィスとしてパートナーシップを基礎とした中間支援を行ってまいりました。
今回はその中から、「環境で地方を元気にする地域循環共生圏づくりプラットフォーム事業」の採択団体として令和元年度から令和4年度まで活動された、鹿島市ラムサール条約推進協議会※の江島美央さんに、協議会のこれまでとこれから、地域循環共生圏に取り組むにあたってのコツやご苦労についてお伺いしました。
(※ 地域循環共生圏事業採択当時。現職は鹿島市ゼロカーボンシティ推進課 課長補佐)
EPO九州では、鹿島市ラムサール条約推進室のESD関連インタビューも掲載しています。
https://epo-kyushu.jp/epo-topix/interview/1480-epo-10.html
鹿島市の地域循環共生圏に関する取り組みと江島さんの活動は以下のページにも紹介されています。
地域循環共生圏ポータルサイト 「地域の持つエネルギーを結集し、経済活動と環境保全を両立する『鹿島モデル』ができるまで」
http://chiikijunkan.env.go.jp/shiru/interview/saga-kashima/
■鹿島市は地域循環共生圏プラットフォーム事業の前身事業から環境省事業に応募し活動してこられました。応募のきっかけはどんなものでしょうか。
平成27年に鹿島干潟がラムサール条約湿地に登録されて、翌年にラムサール条約推進室ができました。このときの登録を行政が主導していたのですが、地域の人たちとの合意が十分ではなかったんです。地域外からお客さんを呼ぶイベントなどは増えたんですが、住民のかたの負担も増えていくという課題がありました。そんなときに地域循環共生圏の公募があり「地域の環境を保全しながら資源を活用して経済を回す」という内容を知って、環境保全とともに地域の経済も回る仕組みを確立したいという思いから応募に至りました。

■地域循環共生圏のプラットフォーム事業では「地域ビジョン」を関係者間で描き、共有します。鹿島市が当初描いていた地域の将来像はどのようなものですか?
実は、地域ビジョンについては関係主体によって目指すものが大きく違うために最後は合意を諦めたんです。「有明海の再生」を目指すにあたって、「貝がいっぱいとれる海にしたい」人もいれば「海苔がいっぱいとれる海にしたい」という意見もあるし、「昔のような海にしたい」という声もある。
「有明海の再生」というゴールは共通でも、みんなが思ってる有明海再生が違っていて意見が対立することがありました。最終的に、合意を得ることに膨大な時間を割くよりも「みんなが思う有明海再生」を目指そうというビジョンでまとまりました。
■地域循環共生圏のプラットフォーム事業を経て、地域資源の捉え方、地域課題に対する打ち手の考え方に変化はありましたか?
地域資源や地域課題の捉え方も、立場や所属団体で違うことに気付きました。鹿島でいうと海鳥を保護すると海苔が食べられてしまう、地域の資源である海苔の生産を守ろうと思ったら海鳥を駆除しなければならないという問題に直面するんですね。みんなが思う有明海が1個じゃないということで、みんなで同じ道を歩くのではなく、それぞれの道を通り最終ゴール(有明海の保全)は同じという方向に切り替えて考えていました。

■地域にお金を落とすという考え方や観点というのは、どのような体制で考えてきたのですか?
協議会は基本的になにが課題かを出す場でした。その課題を解決するための方法を行政から提案して、それをまた協議会で協議する形が基本です。協議会で出される課題と行政が出す案の間にはギャップがあって、行政目線では可視化できないところを埋めてくれるのが協議会という位置づけになっています。
ラムサール湿地に登録された最初の一年間は地域の人に話を聞くと、「住民である自分たちに負担が多い」とか、「行政がラムサール登録したのになぜ住民が身銭を切って活動しなければならないのか」という不満が大きいことに気付きました。だからと言って、市の補助金も有限であり、予算も厳しい。では、補助金なしでやっていくためには、どうにかして地域にお金を落とす仕組みを考えなければ、という発想でやってきました。
■現在、地域循環共生圏づくりに取り組んでいる地域・団体やこれから取り組む地域・団体へ活動のポイントやアドバイスをお願いします。
地域ビジョンを定めるのは大事なんですが、寸分違わず全員がビジョンに合意するのはすごく難しいです。ビジョンの共有・合意するために時間をずっと費やしているうちに、この環境問題や気候危機は進んでしまう。例えば、「生物多様性が損なわれているから守ろう」というビジョンの合意に時間を取るよりも、やり方を先に考える方法もあると思います。ステークホルダーが全員同じ方向を向いて同じ道を歩くのは難しいので、目標に対して方法は1つではないということを伝えたいですね。
(令和5年12月 インタビュー実施)
リンク
ラムサール条約湿地肥前鹿島干潟ウェブサイト
https://hizenkashimahigata.com/
鹿島市ラムサール条約推進室 Facebook
https://www.facebook.com/hizenkashimahigata

