2003年12月に設立登記された、「NPO法人 九州バイオマスフォーラム (KBF)」。その時の発起人の一人であり、現在の事務局長を務められている中坊 真さんにインタビューしました。団体名にもあるように、設立当初から、注目されている再生可能な資源の一つであるバイオマスの普及に取組まれています。また近年力を入れられている、ペレットストーブ、薪ストーブの魅力について、お話していただきました。
NPO法人 九州バイオマスフォーラム
事務局長 中坊 真さん
○日本で未開拓な分野を見つけた!
団体の設立当初から、実践というところを大事にしていました。「研究会」などの広報啓
発だけの活動形態ではなく、リスクも高まりますが、自分達で実際にバイオマスを使ってみ
るということです。
その当時は、まだバイオマスを知らない人が多くて、自然エネルギーの中にバイオマスっ
ていうのがあるの?という雰囲気でした。「とにかく広めよう」ということで、バイオマス
研究の最前線で関わっている大学の先生や研究者の方、環境関連のNPO・NGOの方々が賛同さ
れて発起人となりました。僕はその当時、火山を研究していた学生だったので、その中でも
少し異色でした。その当時のバイオマスの分野は火山学よりもマイナーな分野だったので、
学術的にも興味を持ちました。
当団体で実際に利活用しているバイオマスは草と木が中心です。あまり遠くから運んでき
ても採算が合わないので利用するバイオマスは必然的に身近で調達できるものになりますね。
みんなが資源と思っていなかったものを資源にする、通常は儲からない資源を、何とか儲か
るように工夫して利用することで、バイオマスの利用が促進されると考えています。簡単に
儲かるものだったらみんなやっていますよね。その点で、我々の試みを周りが様子を見てい
るというのはあると思います。誰もやっていないので、リスクが高いために、助成金や補助
金を活用しながら実践しています。主に草と木のバイオマスの活用に取り組んでいますが、
日本の国土の68%が森林なので、草よりも木の方の注目度が高いですね。
特に、木質バイオマスである薪の普及活動を始めてから、薪を売りたいと言う人が増えて
います。現状では、買い手より売り手の方が多いですね。
○思いだけではだめなんだ。
一番大きなブレークスルーは、専従職員が、一人から二人になったことです。一人であれば、
その人の思いだけでやれるけど、人を雇うとなった段階で、経営の話になってくるので。
バイオマスについては都市部では多くの人が知っているかもしれませんが、田舎の方で人を募
集すると、ハローワークからはバイオマスについてほとんど知らないという方が紹介されるの
で、採用や人材教育は普通の会社と同じです。だから、普通の会社と同じ経営をしていくとい
うことを、比較的早い段階から意識せざるを得なくなりました。思いだけではだめだと言うこ
とが、はっきりしたことが、まず一つ目の大きなブレークスルーだと思います。それが200
5年位ですね。僕も自分が経営者になるという意識が希薄だったと思うので、僕自身のブレー
クスルーでもあります。僕は元々管理したり、されたりするのが嫌で、研究の道を進んでいた
ようなものなのに、まさに管理しないといけないようになったという意味では、大きな転換期
です。団体としては、当初の理事会は社会的経験の浅い事務局長である中坊を育てようという
意味合いが大きかったと思います。その後、事業費と職員の数が増えるに従って雇用や事業責
任の重さが出てきて、本来の団体の経営方針などを話し合う方向に変わってきたと思います。
どう組織を維持・運営していくかということが大きな議題になってきたというところですね。
今までは、団体の方向性も明確に定まっていなかったり、事業内容も毎年変化がありました
ので、人の入れ替わりがありました。今後については、ある程度事業の方向性が決まったら、
それに向けて人を育てていくということが必要なのかなと思います。働いているうちに、パソ
コンも人並み以上に使えるし、技術や知識も身についてきて、仕事のスピードもある程度効率
よくこなせるようになる。安く、正確に、効率的にやれば、おのずと仕事はやってくると考え
ています。
そういう観点から、今、力を入れているのは、人材育成ですね。当団体の職員は団体の理念
に賛同して入社したわけではないので、入ってから団体の方針や理念を研修しないといけない。
NPO法人とは何かも知らずに来ていますから、機会があれば研修に行ってもらっています。NPO
の中の内部組織体制、私を含め事務局員の能力向上、人材育成、モチベーションを上げること
にはかなり注意を払っています。今まではそんな余裕はなかったのですが、そういう意味では
余裕がでてきたのかもしれないです。
○薪ストーブの魅力~「炎」に惹きつけられる理由~
欧米では、薪ストーブの燃焼技術が発展しています。燃焼効率も高く、触媒を使って、キレ
イに燃やす、熱を効率よく取りだすことができるようになっています。煙突も高価にはなります
が、火災の発生しにくい、安全なものも出てきています。さらに発展したのがペレットストーブ
です。自動着火して、温度調節までできるので、マンションなどの集合住宅でも使えます。また、
薪やペレットストーブユーザーが増えると、燃料としての薪・ペレットも必要になってきますの
で、木質燃料の供給体制が重要になります。
次に、木質燃料が灯油よりも安くなるということが目標ですね。普及してくると、灯油のよう
に、近くのお店に買いに行くというのが普通になると思います。
僕はどちらかというと、ハイテクが好きだったので、最初は薪ストーブなどのローテク技術を
軽く見ていたところがあったのですが、薪ストーブの木の燃焼技術を知ってみると、ローテクと
思っていたものがかなりハイテクだったことを知りました。また、炎の魅力というのもあるんで
すよね。例えば野焼きボランティアの方たちも、もちろん草原保全に賛同して参加しているので
すが、動機の一つとしては火が見たいところもあるのではないかと思います。火に魅力を感じる
理由は人間の本能的なところにあるのではないかと思います。阿蘇神社の火振り神事もそうです
よね。毎年、多くの観光客でにぎわっています。
現代の日本人の暮らしは火を遠ざける方向に進んでいます。ただ、薪・ペレットストーブを買
われる方は「火を見たい」と言う方が多い。たいていは男性の方が火を見たいという人が多くて、
女性の動機は料理に使えることですね。男性はとにかく燃やしたがります。薪ストーブを入れた
初年度は、うれしくて薪の消費量がすごく多くなるらしいです。部屋は十分あったかいのに、や
たら燃やしたくなるんですよね。女性は、薪ストーブの上に鍋を置いておけるので、煮物ができ
るとか、焼き芋・ピザ・パンなどが食べられるとか、やかんが置けるので、いつでもお茶が飲め
るというところに魅力を感じるようです。また、エアコンみたいな温風ではなく、遠赤外線で暖
まるので、冷え性の人にもいいみたいです。
また、炎をみることで、情緒的な安らぎが得られたり、精神的な影響があるんじゃないかなと
思います。よく火を囲むと会話が弾むとか、コミュニケーションがよくなるとかあるじゃないで
すか。薪ストーブユーザーがよく言うのは、家族団らんが生まれるとか、家族仲・夫婦仲がよく
なるとか・・・本当にあるんですよ。家の中に、火があることで、日本人の暮らしが変わるんじ
ゃないかなというのはありますね。もう一つ、薪ストーブのヘビーユーザーを見ていると、薪を
すごく集めたがるんですよ。必要以上に集めたがる。そして、集った薪を見て満足する。炎を見
て得る満足感と薪を集めて満足感を得るのと2つあります。
火は、人類の起源とも関わっていると思います。料理の部分と、暖を得るという生存に関わる
ところもありますよね。また、薪を集めるというのは、狩猟採集の本能みたいなところで、脳の
古い部分と大きく関わっているのではないかなと思います。コレクターとかいるじゃないですか?
そういう人も、狩猟採集の本能的なところと関わっているんじゃないかなと人類学的な考察をし
ています。
僕は今までエネルギーとか資源という観点から物事を見てきたのですが、薪ストーブユーザーの
話を聞いていると、人類学的な視点で面白い現象がありますね。薪の販売事業は売上も伸びていな
いし、利益も出ていないけど、何か違う手ごたえを感じています。これは伸びるのではないかなと。
○阿蘇から九州、日本、そして世界に発信
僕も団体の理事の思いもそうですが、阿蘇でやっていることを、九州全体、日本全国、世界に
対して発信できることもあるだろうと思います。北海道大学やアメリカのイリノイ大学から委託を
受けて調査をしたり、情報・ノウハウ面に関しては、場合によっては、日本の最先端をいっている
部分があるだろうと思っています。
また、福岡市内とか、熊本市内ではなくて、観光地に活動の拠点があったっていうのが、一つの
メリットですね。観光地にあって、人が集まる場所であるということ。そして、単にシンクタンク的
な活動ではなくて、実際にその阿蘇の草原や木質資源を使って実践しているということが、うちの団
体にとっても一つの強みになっているんじゃないかなと。実践するフィールドを持っているというの
は強いですね。
■足かせがあるからこそ、新たなイノベーションが生まれる。
中坊さんにインタビューをしたのは、東日本大震災が起こる前のことでした。被災地では、
電気やガス・灯油といったライフラインが途絶された中で、薪ストーブや薪ボイラーが、避難所
の暖房や給湯で大活躍したそうです。今ほど自然エネルギーに注目が集まっている時ではない中で、
「NPO」で「バイオマス」に取り組むという、非常に厳しい土壌で戦っているからこそ、競争力、
創意工夫が生まれるという力強い言葉が印象的でした。
日本中で、自分たちが使うエネルギーについて考えなおし、一人一人に節電が求められている今、
これまで以上に注目が集まることと思います。団体名にも冠しているように、設立以来「バイオマス」
に取り組んできたKBF、今後も九州・阿蘇から発信されるメッセージからますます目が離せません!
EPO九州 林 秀美
【リンク先】
NPO法人 九州バイオマスフォーラム http://kbf.sub.jp/

