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 EPO九州からのお知らせ  abot R

環境政策セミナー2009 in Kumamoto 開催報告

 本土の西南端に位置する九州・沖縄地方ではすでに地球温暖化とも考えられる影響が現れており、当該地方は他の地域に先立って温暖化の影響を受ける「環境 ハザードの最前線」に位置しています。そこで、地球温暖化の影響に関する最新の検討結果や温暖化の影響を受けている「生の声」を広く地方公共団体や企業・ 市民などと共有し、今後の検討につなげていくことを目的としてセミナーを開催しました。

日時: 平成21年12月17日 13:30受付  14:00開会  16:30閉会
会場: 熊本市国際交流会館 ホール
主催: 環境省九州地方環境事務所
後援: 福岡管区気象台、熊本県、熊本市
協力: cross fm、熊本日日新聞
実施主体: 九州環境パートナーシップオフィス(EPO九州)

プログラム :
講演  「九州・沖縄地方の地球温暖化影響・適応策の検討について」(九州地方環境事務所 環境対策課)
講演  「異常気象レポート九州・山口県・沖縄版について」(福岡管区気象台)

パネルディスカッション

福岡管区気象台 西郷 雅典
農家 片山 和洋
NPO法人気候ネットワーク 桃井 貴子
熊本日日新聞社 久間 孝志
九州地方環境事務所 所長 神田 修二
コーディネーター 久留米大学教授 藤田 八暉

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講演

「九州・沖縄地方の地球温暖化影響・適応策の検討について」

九州地方環境事務所の地方環境対策調査官 野本氏より、ナガサキアゲハの分布域の北上で温暖化の状況が説明され、熱帯に生息する蝶の上陸により自生する植物に被害が生じているという温暖化の生態系 へ及ぼす影響が指摘された。続いて、温暖化への対策は、緩和策を最大限行ったとしても一定の温暖化の影響は避けられず、緩和策と適応策の両方が必要であ り、九州・沖縄地方での温暖顔影響と適応策の検討を開始したことが紹介された。



「異常気象レポート九州・山口県・沖縄版について」

福岡管区気象台の地球温暖化情報官 西郷氏から、二酸化炭素と世界・日本の平均気温の観測結果が説明され、福岡管区気象台等が取りまとめた「異常気象レ ポート 九州・山口県・沖縄版2009」の内容紹介が行われた。真夏日・猛暑日・熱帯夜の増加と冬日の減少により温暖化が見られること、降水量・海面水位 の上昇がみられることが報告され、今後の温暖化予測が説明された。

パネルディスカッション
パネラー  西郷 雅典氏,片山 和洋氏,桃井 貴子氏,久間 孝志氏,神田 修二氏
コーディネーター 藤田 八暉氏
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◆パネルディスカッションについて
藤田 2009年12月7日よりコペンハーゲンにてCOP15が開催されている中、本日「環境政策セミナー」が開催されるということで、非常に時宜を得た 企画となったと思う。パネルディスカッションでは、メインテーマとして、まずは地球温暖化の影響を出来るだけ減らしていく緩和策、そしてそれでも2℃位の 気温上昇は避けられない状況に対応する適応策を具体的に明らかにしていきたい。


◆パネラーからの報告
桃井 いま科学者が予測した以上に早いスピードで、氷河・北極海の氷・異常気象・ボリビアでの大干ばつ・食糧の価格上昇・発展途上国の飢餓被害等が起こっ ており、人類にとって危機的な状況を避けるためには産業革命よりも2℃未満の気温上昇に留めなければいけない。そのためには、今後の削減目標についても、 先進国では1990年を100%としたときに、2020年には25~40%、2050年には80%~95%の削減が必要。
しかし日本は増加する一方で基準年より9%増加しており、火力発電は日本の排出量の3割をもっており、日本の排出量の半分が161の大規模事業所による。よって2℃未満にとどめるためには、日本の構造全体を変えなければいけない。
気候ネットワークをはじめ、全国約200の団体が集まり中・長期的削減目標を日本で定めて、確実に達成させる為のルール・しくみをつくることを目的にMAKE the RULEキャンペーンを展開している。
CO2削減をがんばる人が報われ、CO2を排出する人がその負担をしていく社会を目指すことが重要。


西郷 講演の補足として、温暖化の影響を植物の開花、紅葉などの時期遷移の点からデータを示したい。
身近な例では、桜の開花日は熊本では50年間で4日早くなり、たんぽぽに関しては、13日程度早く咲くようになった。カエデの紅葉は逆に25日遅くなっている。

久間 日頃の取材活動から、いくつか紹介したい。東南アジア産のカタツムリの繁殖が熊本の民家の軒先でも越冬でき、繁殖できていること発見された。また、 温帯系のアブラゼミから亜熱帯系のクマゼミに代わっていることも見られる。さらに、牛深の海でサンゴの白化、南方系の海藻が熊本の海で見られる。


◆一次産業と気候変動
片山 農家としての経験的側面から、1か月雨が降らなかったり、1週間雨が降り続けたり、ゲリラ豪雨があったり、対応に苦難している。
また桃の栽培において、冬の時期は7℃以下を800時間休眠する必要あり、以前は12月の瀬には到達していたが、最近では1月の瀬にならないと到達しない。
最近感じているのは、急劇な温度変化に木が対応しきれていない。また暖房を利用して、ハウス内を暖めているが、重油も高騰しているので、保温出来るように、巨大な保温資材を張り巡らしている。
対応策としては、マンゴーの栽培を開始、これからの気温にあった農作物を育てて行きたいと思っている。

久間 片山氏の農家としての発表があったが、人間よりも生物・農作物の方がより早く影響が表れている。気温が高くなることによって、米についても影響が見 えているし、農家当事者・行政機関も深刻に捉え、暑さに強い「くまさんの力」という品種を改良し、商品価値を落とさないようにしている。この他、福岡県 「元気つくし」佐賀「さがびより」、鹿児島でも暑さに強い品種を作っている。
有明海は海苔の最大産地で、熊本県の漁業の生産高の多くを海苔が占めている。しかし、最近は海水温が高くなり、種付けが年々遅くなり、1か月~半月遅れている。
海苔自体が打撃を受けかねない、熊本県の力をそいでしまうのではないかと危惧している。
 
桃井 全国各地で温暖化の影響を考えるためのイベントを開催し、その地域でどんな影響があるのかを報告してもらったが、自然と付き合っている人ほど、より 強く環境の変化を感じている。例えば、北海道では鮭の定置網に南方系の魚が引っ掛かる、長崎・五島では、今までは普段とれるはずの魚が全く取れなくなって いる。
グローバルな視点を持ち、日本全体として減らすということに目を向け、どこに集中して、何を削減したいのかということ。大幅に火力発電所で出ているところ を削減していくということも必要。農業に関しては、品種改良しても、この勢いであれば、次から次に改良し続けなければならなくなる。


◆自然エネルギーと気候変動
藤田 地球温暖化対策のためにも、今後は火力から自然エネルギーにシフトしていかなければならない。例えば、日田市(大分県)や大木町(福岡県)ではバイオマス発電の取組みを行っている。自然エネルギーに関して話題があれば、紹介してもらいたい。

久間 熊本県には太陽光パネルの工場が2社あり、熊本県では太陽光発電の産業振興に力を入れている。熊本県は全国でも2番目の普及。
太陽光発電分野(生産量等)で日本が1位を奪われたドイツを取材した際、バイオマス発電、風力発電等も見てきた。国がそのような電力を固定価格で買い取る事を始めた為、普及が促進された。個人として出来ることには限界がある。
一人一人の取組みには限界がある。国家・政治が意思を持って、国の仕組みを変えると言う事に、飛躍的に対策を進める肝があると思う。

藤田 日本でも家庭の太陽光発電で生じた余剰電力を電気事業者に適正価格で買い取ることを義務付ける制度が導入されたが、「余剰」では弱い。
また日本のような急峻な地形で、川の流れが速いところでは、小水力発電を農業用水路などでも、十分発電できる。現在の買い取り価格を引き上げ25円にしてくれればペイできるようだ。

桃井 日本の再生可能エネルギーの伸びなさはあまりにひどいものがある。小規模なものも含めても3%程度しかない。ドイツ・スペインなどは進んでいる。
九州は地熱・太陽光・バイオマスなどの宝庫だと思う。日本はエネルギーがないと言われているが、ふんだんに活かしていくことが大事。

片山 農家としても、水力に関しては分からないが、植木ではビニールハウスが多いので、曲がるタイプの太陽光発電をビニールハウス等につけてみると言う話も聞いている。
ハウス栽培に関しては、温度調整をしなければならず、開閉によって夜間の保温に関しては、個人的にしている。

桃井 重油をたくという話があったが、ハウス栽培で間伐材利用の代替燃料を利用しているところもある。そのような環境に配慮した形での転換があるといいと思う。
日本の場合森が荒れて、間伐が進んでいない。そこを整備してくこととエネルギーの問題を合わせて考えることが、鍵となると思う。需要をしっかり作っておく ということ。バイオマス・森林を使ってということに関しては岩手県が先進的な取組みをしている。葛巻町はバイオマスの町ということで、糞尿を使ってメタン を発生させ、発電するとか、森林を整備しながら発電する、薪ストーブを各家庭に普及させていくということをしている。岩手県全体でバイオマス立県というこ とをしている。
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◆メディアとしての取り組み
藤田 メディアで自然エネルギーの取組み事例などを紹介するのはどうか?

久間 熊本と関連付けながら、全国の事例を紹介していくということをしている。環境問題を考える時によく使われる言葉が「地球規模で考えて、地域から行動する」だ。
地方紙として何ができるかということを考えた時に、地域から行動する人たちを応援することが、そして行動を起こそうとする人を支援することが地方紙の役目 ではないかと思う。シロクマの動向や、海に沈みかけている島を見て、グローバルな視点からの環境問題に目覚める人がいるかもしれないが、地方紙としては、 熊本で南方のカタツムリが繁殖している事例を紹介したり、高温のため米が採れなくなっている事等身近な問題を紹介し、その積み重ねで、熊本県民の皆さんが 行動を起こすきっかけに繋げて行きたいと思っている。
つい先日まで、熊本市内でのエコ住宅の取組みについて連載していた。6戸の賃貸住宅で、部屋の温度調整も自然エネルギーで出来るようにし、個別に各家に畑があるという住宅の紹介。
また東京で行われたエコビレッジのシンポジウム、千葉にある栗本ミレニアムシティと先進事例についても取材し、記事を書いた所だった。
1月3日にエコ関係の新年号の準備をしている。循環型社会を目指すには、昔の農家を模範にするようなもののほか、太陽光発電・風力発電やエコキュートをつ けて、今までとそん色のない便利な暮らしを維持しながら、最新のテクノロジーを搭載することエネルギーを作り出すことによって、環境に負荷をかけない生活 を目指そうという2つの方向性があると思う。

 
◆若者活動と環境・エコ
藤田 ユースかんくまの立場から今のようなことに取組んでいくという事についてはどう思うか?

片山 自分達の活動の中で考えている事が、若い方に環境について話しても、なかなか浸透していないということで立ち上げた。全然環境に関心がない人達も 0.1%でも関心を持っていただければと思って、活動している。熊本で、4月にアースデー、10月には竹の循環をテーマの一つに挙げている祭り、「水あか り」で利用する5万4千個のキャンドルのうち、5千個をエコキャンドルに変えることを提案し、ワークショップ、障害者支援施設の協力により実行している。


◆今後の取り組みと検討
藤田 今後の温暖化対策の検討などについて神田所長から紹介をお願いしたい。

神田 九州・沖縄地方の温暖化影響と適応策の検討だが、随時内容が確たるものとなった段階では、発表をしていきたいと思っている。検討会は手前みそだが、 ほとんどの行政機関、国の出先機関すべて、県、市町村、民間も入っているということで、いい形となっている。様々な調査がある中で、分かりやすい形で提示 して行きたい。今日のセミナーもいろいろな角度から深い議論・情報提供があり、私自身も勉強になり、参加の方にも実際役に立つものになったと思う。私たち もそのようなものになるように、まとまったものを提供したいと思っている。
自らの働きかけだけでなく、国の仕組みからという話が出ていた。そういうものを反映させるために、環境省が地球温暖化対策基本法というものに対する国民の意見募集をしている。制度に関わることについてご意見をお願いしたい。

 
◆質疑応答
Q,CO2を減らす為にどうするのかということに関しての対策があまり見えなかった。
省エネルギーと自然エネルギーと省資源、この3つを組み合わせる事が大事だと思う。

藤田 地球温暖化対策法と省エネ法が改正・強化されてきているが、その全体的な枠組みである地球温暖化対策基本法というような、法的整備をすることと、必要な対策を実施することと両方があると思う。
当然のことながら3Eという考え方でしなければならないというのももっともだ。
トヨタがエコカーを売り出す時に、経済的な助成措置が必要だと言ってきた。環境と経済の好循環ということも視野にいれないといけないと思う。


Q,公共事業と環境影響調査説明責任という分野の法的な拘束力が漠然としているのではないかと危惧している。
藤田 一般論になるが、環境影響評価法では、対象事業を大規模な事業だけにしているが、小規模なものについては地方の条例で必要な対処をする形になってい る。熊本県の環境アセスメント条例、もしくは熊本市の条例があろう。熊本市が政令指定都市になれば、環境部門の組織も整備されることになると思う。公共事 業に関わらず、民間事業に関しても、環境に影響を及ぼさないように取組んでいく必要がある。それぞれの自治体で、より地域の実情に合った、取組みをして頂 きたいと思う。

 

Q,気候変化に対する市民努力がどのように行われるのか?市民努力が発生する為の   政策的な制度は?
(韓国忠清南道環境教育ネットワーク運営委員長 車守徹氏)

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 桃井 日本では環境教育は学校教育の中に制度として位置付けていない。ゆとり教育の一環として取り入れる先生もいる。
 それとは別に日本の温暖化対策推進法という法律のなかで、温暖化対策活動推進員=7000人が各都道府県で県知事から委嘱をされ、地域の中での温暖化対策の推進普及をほぼボランティアで取組んでいる。地域によって差がある。

藤田 地球温暖化対策法では、地球温暖化防止活動推進センターを、国のセンターと各都道府県のセンターを置くようにされていたが、法改正により政令指定都市のほか中核市にも置くようになった。これを拠点として活かすような取組を望みたい。


環境省 九州地方環境パートナーシップオフィス 
EPO九州
住所:熊本市中央区花畑町4-18 
熊本市国際交流会館2F
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