2018年12月4日~5日の二日間に渡り、熊本県水俣市において「平成30年度ビジターセンター意見交換会」を実施いたしました。
今回で4回目となり、九州地域のESDネットワーク推進に向け、九州管内のビジターセンターとの関係促進・ネットワークづくりを目的として企画している意見交換会です。
今年度は、「水俣から学ぶ」をテーマに、環境学習や教育旅行を企画・実施し、県内外へ発信している関係者からの学びの場を設け、ビジターセンターで活用できる、教育旅行受け入れ体制や手法、地元との連携ノウハウについて共有する内容を設定しました。
各センター職員間の情報交換と経験交流が加速し、知見や情報が共有された意見交換会となりまいした。
以下は当日の模様から作成したレポートです。
ぜひ御覧ください。

今年度のビジターセンター意見交換会は水俣市の熊本県環境センターからスタート。
この環境センターのある「まなびの丘」周辺には、水俣市立水俣病資料館と国立水俣病総合研究センター水俣病情報センターの3つの施設が隣接しています。
自己紹介の後は水俣病資料館へ移動し、水俣病患者の方による語り部講話、環不知火プランニングのフィールドパートナーによる案内解説に参加しました。


語り部講話では、水俣病患者であり、元水俣病資料館館長である坂本直充さんのお話を伺いました。
公害問題によって寸断された地域コミュニティがどのように回復の道筋を得ていったのか、坂本さん自身のストーリーを交えた講話となり、参加者は興味深く拝聴しました。
元来、豊かな自然環境に支えられていた水俣。工場の誘致に始まる産業構造の変化や、それに伴って地域がどのように変化していったのかについて展示を通して学ぶ時間となりました。
今もなお集結していない水俣病の問題。
誰しもが、他人事と捉えず水俣の歴史から、自分自身、自分の地域につながるポイントを見出すことの重要さを体感しました。

その後環境センターに会場を移し、水俣市で環境学習や教育旅行の企画実施に取り組む、一般社団法人 環不知火プランニングの森山亜矢子代表からの話題提供の時間としました。
森山代表からは「水俣での学びと教育旅行の提供について」というテーマで、どのような手法で地域を巻き込んだ環境学習とフィールドワークを提供しているのかについて語られました。
修学旅行だけでなく、社員旅行や大学生ワークショップなど、多彩な内容で積み重ねてこられた受入実績から得た知見を参加者に広く共有していただきました。
景観や歴史だけでなく、地域の人材を資源として捉え、顧客とともにニーズを探りながら企画、実施することの重要さは、ビジターセンター職員にも今後の活動のヒントとなる部分でした。

5日のプログラム国立水俣病研究センターの見学からスタートしました。
こちらでは、公害の原点といえる水俣病とその原因となったメチル水銀に関する総合的な調査・研究を行っています。
また水俣における地域の健康増進の一環として介護予防事業や、水俣病患者のリハビリテーションを行う施設です。
海水や土壌に含まれる水銀濃度の継続的な調査や、水銀が人体にもたらす健康被害のメカニズムなど、日々研究者による実験が行われています。
現在も世界各地で発生している水銀汚染に対応するべく、人材の派遣や調査を行っています。

研究センターの屋上からは美しい水俣湾を一望。
肥沃な漁場をもたらしていた閉鎖的な海域が、逆に被害を拡大したことがよくわかります。

続いて、研究センターと同じ水俣市湯の児地域にある、湯の児スペイン村 福田農場を訪問しました。
ミカンの観光農園からスタートした福田農場。この日も、たくさんの子供達がミカン狩りを楽しんでいました。

続いては、福田農場創業当時から、教育旅行受け入れ、食品加工と拡大してきた活動について、創業者の奥様からストーリーが語られました。
湯の児の景観から発想された、スペインをテーマとする農場。建物の内外には電信柱や枕木など、様々な資材が再利用されており、リユースの概念が徹底されています。
スタッフとのチームワーク構築や、外国人受け入れのノウハウなど、施設運営にあたってもビジターセンターとの共通項が多く、質疑応答が繰り返されました。

プログラムの締めくくりとして、各職員による問題意識の共有ミーティングを実施しました。
今回のミーティングにあたって事前に各職員から日頃の問題意識を収集し、課題について各々からアイデアを共有する短時間ながらも中身の濃い時間となりました。
スタッフのスキル向上や外国人受け入れ、プログラム実施の際のコスト感覚など様々な話題が飛び交い、各職員が即時に活用できるような実務的な手法が検討されました。

日頃九州各県で活動するビジターセンター職員が一同に会した意見交換会。
現在は美しい海と緑を称える水俣の記憶と現在から、自然環境の大切さだけでなく、地域の魅力を伝える人材の重要性を皆で実感することができました。
また今回の場を起点に、今後新たなネットワークが生まれていく予感を強く感じています。
各参加者が今回の意見交換会で得た情報や知見を、日々のセンターでのご活動に活かしていただけることを心より願っております。