これまで九州地方環境パートナーシップオフィスでは、多くの九州・沖縄地域の活動団体の皆様と協働するとともに、オフィスとしてパートナーシップを基礎とした中間支援を行ってまいりました。
今回はその中から、「令和元年度環境で地方を元気にする地域循環共生圏づくりプラットフォーム事業」の採択団体として活動された、一般社団法人 九州循環共生協議会の山村 公人さんに、近年のご活動や今後の展望についてお伺いしました。
●ご参考

【山村氏プロフィール】
山村 公人 (やまむら きみひと)
一般社団法人九州循環共生協議会 理事
CO2排出削減量の算定やカーボンオフセット等の事業から、近年では生物多様性保全に関わる事業が主となってきている。二次的自然の保全の為、地域資源(特に放置竹林)の適正な管理と利用(エネルギー、マテリアル、食料)に関わる活動を重点的に実施中。
また、SDGsを念頭に農福連携にも取組み中。
■「令和元年度環境で地方を元気にする地域循環共生圏づくりプラットフォーム事業」に採択、ご活動をいただいたその後の取り組みはいかがですか。
かつては、竹林の資源活用とともにJ-クレジットに関する取り組みを実施しており、全国紙からの注目もありました。
事業参加をとおして、協働というコンセプトはそれまで自分の中にない概念で、事業を活用できたことは大変よかったと感じています。
特に、これまでの環境問題の啓発活動が中心となっていた団体の活動から、新たに経済循環領域を取り入れることを支援いただいたと思います。
事業においては、地域関係者を巻き込む観点から朝倉市、久留米市の行政との連携を意識していました。この部分で最も苦労しました。
行政に企画を提案すると、予算面で合意できないことが多かったことから、現在は行政の施策に準じた活動ではなく、市民ならではの目線で行政が協働したくなるような活動を展開することを意識しています。
■最近のご活動やステークホルダーの課題はいかがですか
環境省による「SDGsリーダー研修」に参加し、各地の課題や取り組み事例を学びネットワーキングを行いました。
また、社団法人として「SDGsバンブープロジェクト」に参加しています。竹のパウダー化、純国産メンマなど荒廃竹林の資源化、管理の促進に取り組んでおり、環境省、企業、教育機関など多様な主体と繋がりを持ち続けています。
●ご参考
竹林の利活用に関する取組が全国紙を含めたメディアにも取り上げられており、これまでやってきた竹林に関する活動をSDGsの目線でコンセプトを考えています。
地域間の連携として、福岡県内各地(糸島市、嘉麻市、八女市)で荒廃放置竹林対策に取り組む皆さまにSDGsバンブープロジェクト推進フォーラム(後述)のメンバーに加わっていただきました。
■地域で活動をしていくなかで、SDGsを取り入れたことによる変化はありますか?
「SDGs」という言葉が生まれると同時に、一部の人だけでなくみんなで一緒に取り組まなければという機運が高まりました。
環境課題だけでなく、社会課題を経済を通じて統合的に解決するという「サスティナブル」の考え方が一般的になってきているとの実感を得ています。
■SDGsと経済の関係についてはどのようにお考えですか。
これまで様々な環境や地域活性化に関する言葉が生まれてきましたが、そのなかでもSDGsは広く浸透しました。
消費者と事業者がお互いに経済合理性だけで判断されていた段階から、自身のメリットの次に選択肢として環境に配慮したものを選ぶような価値観が生まれています。SDGsに配慮した商品であることを訴求することは、事業者にとって必須事項になると感じています。
■「SDGsバンブープロジェクト推進フォーラム」として九州SDGs経営推進フォーラムへ参加されています。
このフォーラムによる団体活動へのフィードバックはありましたか?
経済産業省九州経済産業局からは、情報発信における協力や、CSV観点での竹藪利活用の呼びかけを依頼したり、企業とのつながりについてご指南頂いています。
メールマガジンによる発信など、支援依頼の受け入れ態勢が整備されています。
■今後の課題やチャレンジしたいことはありますか?
竹の経済的活用として、二種類の資材があります。その一つである、竹やぶになる前の竹、すなわちタケノコをメンマにする事業が全国で広がっています。
もう一つの資材は、竹やぶの竹、つまり、青竹です。この青竹をパウダー状に粉砕したり、炭化するなどして新商品の開発にも挑戦し続けたいと思っています。
一方、団体として商品販売の経験がないことが課題です。
今後経済と社会課題の同時解決の方向性が一層強まる中、竹の需要を掘り起こし雇用を生み出すことが目的なので、経済についてもっと勉強、研鑽を深めたいと思います。
クラウドファンディングやECサイトで固定客作りを図っていく計画も持っており、まずは事業に共感してもらえるファンづくりを始めたいと考えています。
なぜいま「竹」なのかということを積極的に発信し、消費者に理解してもらうことに取り組みたいと思います。
■今後の事業の展望はいかがですか?
新製品の開発、販路の開拓など需要の喚起と安定化も大変な作業ですが、同時に、供給体制の整備も行わねばなりません。地域の特性(人財・設備等)に応じ、メンマづくり、炭づくり、竹パウダーづくり等、適材適所で供給体制の整備を図っていきたく考えてます。
需要がなければ、供給体制も構築できません。小さな実績を少しずつ作り、供給体制を順次整備していくことになると思います。
■令和元年度の事業時点から、山村さんがコーディネーター的な活動にシフトされているような印象を受けます
当時描いた事業の全体構想が大きすぎたことを反省しています。
関係先から協力を得ることはできましたが、暫定的なものに留まり、事業実施期間だけの一時的なものとなりました。
翌年は事業の継続には繋がらず、団体として今からになにができるのかを考え直す時間をもつことができました。その時からの変化として、財源がない中で協力者にメリットをどう提供できるかを考えるようになりました。
令和元年度の環境省やEPO九州から実施された中間支援を通じ、「協働取組」「地域循環共生圏」「ローカルSDGs」を学びました。現在では、「点と点を結ぶ」「各々の強みを活かして頂く」という考え方で、事業に関わる方々全員参加型の活動を目指しています。
SDGsという共有の価値観や方向性で、事業の実績を積み上げ、それに倣う新たな参画者が増えていくよう活動を継続してまいります。
■一層注目が集まる、脱炭素、低炭素に関する社会課題についてどのようにお考えですか?
事業者と消費者、両者の関係性が重要だと思います。「消費は投票だ」と言われます。化石燃料など自然環境に悪い影響のある電源を選ぶのは消費者です。自動車で使用するエネルギーもきっとそうで、消費者の選択が事業者の生産活動に反映されると思います。まず消費者の行動変容があって事業者の変容につながるのではないでしょうか。
地球市民一人一人のライフスタイルが環境にどういう影響を及ぼすのか、行政機関をはじめとした各主体による情報発信は、より一層重要になってくると思います。
経済成長ありきで環境負荷を与え続けてしまうと、やがて地球環境は取り返しのつかない状態になってしまいます。そうならない為にも、各々の自覚と行動変容が、我々に課された課題だと思います。
(2021年9月17日 福岡県にてインタビュー実施)